松下− |
絵を描く技法なんですけど、通常では、例えば鉛筆ですとか筆を使って描くのを、僕はエアブラシという、いわゆる空気の筆を使って、簡単に言っちゃえばスプレーですね、それで絵を描き始めたんですけどね。
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浜田雅功氏− |
えっ、それは何のこだわりがあるんですか?エアブラシってのは?
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松下− |
それまでのエアブラシっていう技法は、ちょっと専門的な話になっちゃいますけど、割とリアルな、まるで写真のように、見まごうばかりのリアルな絵っていうのが一時すごく流行ったんですけど、そういうものを描くために使われた道具だったんですよ。それが、まあ、僕のスタイルっていうのはちょっとコミカルなイラストレーションなんですけど、それにその筆を応用して絵をより立体的に見せるっていうんですかね、そういう事に使ったってのは、初めてとまでは言えないですけど、割りと早かったかなぁって思います。
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浜田氏− |
それを使うきっかけはなんやったんですか?
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松下− |
えっとねー、イギリスの当時、ビートルズのイラストレーションを描いて有名だったイラストレーターがいて、その人が原画展をやったんですよ。それをたまたま見に行って。全く知らない人なんですけど、二人並んでね、『いや〜これをエアブラシで描いてんだけど、こんな面倒くさい絵は絶対他にやる奴はいないな』って聞いたんですよ。
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浜田氏− |
となりでそれしゃべってたんですか。じゃあ、俺がやろうと?
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松下− |
そう、誰もやらないんだったら、これは結構個性的な技術になるかなってね。
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浜田氏− |
なるほどね。
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川平慈英氏− |
松下さんの作風っていうか、ああいうキャラクターはメジャーに出てますけど、最初からこれイイねぇって感じで、取っ掛かりは良かったんですか?
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松下− |
いや、全くそれは受け入れられなくて。
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川平氏− |
えっ、最初はなんだこれっていう?
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松下− |
出版社とかにポートフォリオ(作品)を持って廻ったんですね、でも、『この絵はチョット、バタ臭さ過ぎて日本人には受けないよ!』って言われて。待てどくらせど電話もかからずで、全く鳴かず飛ばずでしたね。
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浜田氏− |
は〜〜、えっ何がキッカケやったんですかね?
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松下− |
えっとね〜、それでもたまたま小さな仕事だったんですけど、雑誌の仕事をひとつ頂いて、それはこんな小さなカットだったんですけど、それをポパイの当時の編集部の編集長が見てくれて、電話をくれたんですよ。
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浜田氏− |
へぇ〜
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川平氏− |
ポパイの表紙になってましたよね。
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松下− |
はい。その時たまたまメジャーリーグベースボールの特集号が次に出る予定で、写真で表紙も組まれていたんですよ。ただし、もしキミが二日間で入稿日に間に合って、このイラストを表紙として描いてくれるなら、良かったら差し替えてくれるって話で。完徹をしまして、丸々二日かけて。で、持ってって、そしたらそれを採用してくれたんですよ。
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川平氏− |
そっからドッカンですよね。じゃあ、そのあとバタ臭いねって言っていた人達や、、、
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浜田氏− |
周りの反応っちゅうのはどうでしたか?
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松下− |
ええ、もうそんなこと言ったことも忘れて、その人たちからも仕事が来ました。
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浜田氏− |
いいですねぇ〜〜
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川平氏− |
WINNERSですよ〜
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浜田氏− |
そんなもんなんや〜
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◎『掟破りの仕事発注』 そんな独特な画風が話題となり、イラストの依頼が殺到。しかし、なかには掟破りな依頼もあった。
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松下− |
野球のパ・リーグのオリックスブルーウェーブ、イチロー選手が前いたところのキャラクターを作ってるんですけども、、、
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浜田氏− |
あぁ、あれそうなんですか。
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松下− |
あと、ガンバ大阪とか。 実はそこの仕事をしまして、そのあとすぐにセ・リーグの他球団から、オリックスさんトコみたいなキャラクターを作ってくれない?って言ってきまして。それは原則的に1業種1社という、ちょっと固い掟がありますから、業界では。丁重に、それはちょっと出来ませんと断りました。
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浜田氏− |
なるほどなるほど。
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川平氏− |
みんな欲しがるでしょ。ああいう感じでインパクト強いですからねえ。
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永井 大氏− |
ぶっちゃけ、あれですか、キャラクターひとつ作るとどれくらい儲かるんですか?
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川平氏− |
それは聞きたいな。
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松下− |
それはねぇ、僕の所は会社のシステムになっているんですけど、まぁ、タレントさんと一緒で、キャラクターを作るとそれが1人のタレントとして企業さんと契約、だいたい年契なんですけど、1年契約でね。で、まぁ、すごく儲かるときでもウン千万みたいな事はありますね。
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浜田氏− |
ふ〜ん。 |
松下− |
まぁ、キャラクターっていうのは生身のタレントさんと違って、どういうんですか、歳も取らない、スキャンダルも起こさない。それが利点ですから。
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浜田氏− |
ハハハハハ〜
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川平氏− |
遅刻も文句もない(笑)。
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浜田氏− |
スッポカシもない(笑)。
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◎『ディズニー社からの依頼』 松下の描くイラストは次々と見る人の心を捉え、ついにあのディズニーからもイラストの依頼がとどいた!
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松下− |
頼まれて、是非あなたのタッチで描いてくださいって依頼がきたんですね。で、ご承知かと思いますけど、ディズニーっていうのは他の人がキャラクターを描いた時ってのは物凄いチェックが厳しいんですよ、ああでもない、こうでもないって。それは僕も聞いていたんでね、やっぱり結構緊張して、それなりに。
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浜田氏− |
はいはいはい、厳しそうですねぇ。でも、ミッキー描けるんやったら、描いてみたいっすよね。
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松下− |
そうですね。でまぁ、小さいときから結構ミッキーマウスとかって描いてましたから、それなりには慣れていたんですけど、そのへんを肝に銘じてきっちり描いて。で、70周年のポスターだったんですね、ミッキー生誕。その時は全くノーチェックでOKという事で。
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浜田氏− |
直しも無し!え、どういう絵を描いたんですか?
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松下− |
えっとね、ディズニーさんの生涯の本があるじゃないですか。それを読んでいたときに、一番最初自分もエンターテイナーになりたくて、場末の、、、なんていうんですか?
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浜田氏− |
酒場みたいな?
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松下− |
そう、酒場みたいなところで小さなステージみたいのがよくあるじゃないですか。あそこでスタンドアップコメディみたいのとか、ちょっとこうダンスをしたり、なんか小さいときから憧れてやってたって読んだんですよ。
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浜田氏− |
なるほど。
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松下− |
あぁ、これが原点なのかなって思って、そのシチュエーションにミッキーマウスとミニーマウスを、ミッキーがピアノを弾いて、ミニーがピアノの上に座って唄っているみたいな状況を描いたんですよ。それは全くノーチェックでOKでした。
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浜田氏− |
ほ〜、ちょっとよさげだね。
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川平氏− |
いい話ですね。
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浜田氏− |
いい感じやな〜
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松下− |
だから、そういうチェックに関しては、本当になんていうかキャラクタービジネスの基盤を作った場所ですから、ウォルト・ディズニーの会社は。だから、ウチあたりでもその辺はかなり見習うべきトコがあって、ずいぶん参考には色々させていただいてますけど。
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